2007年に開幕したフットサルのトップリーグである日本フットサルリーグ(通称:Fリーグ)に、2009年から参戦しているフットサルクラブのエスポラーダ北海道。北海道出身の選手で構成された生粋の“道産子チーム”を、2008年の創設時から現在まで11年間率いているのが、自らも道産子である元サロンフットボール日本代表の小野寺隆彦さんです。
エスポラーダ北海道のFリーグ参戦から10周年を迎えた今季。第2節のFリーグ選抜戦では来場者にSVOLME特製Tシャツをプレゼントするという画期的な試みを行い、Fリーグ歴代2位の観客動員数となる5,343人の来場を記録しました。そんなFリーグ随一の人気クラブの指揮官である小野寺監督に、エスポラーダの人気の秘密や創設期からのストーリー、そして今季第2節のFリーグ選抜戦でのエピソードなどを伺いました。

2018.10.12

「スポーツっていいなぁ…」北海道の人たちとともに達成した5,343の数字の意味

小野寺隆彦さん(日本フットサルリーグ・エスポラーダ北海道監督)

北海道発祥のフットサル。チーム創設期から5,343名のファンが集結するまで

- エスポラーダの選手はすべて北海道出身の選手ですね。そもそも北海道の人にとってフットサルとは?

諸説あるようですが、フットサルは日本においては北海道が発祥と言われています。札幌大学名誉教授の柴田勗(つとむ)教授が、1970年代前半に南米から、フットサルの前身であるサロンフットボールを南米から日本に持ち込みました。「雪降ったらサロンだね。」こんな感じで、冬季の寒さが厳しく雪が降る北海道においてのサロンフットボールは、身近な室内スポーツとして子供から大人の間で広く普及しました。今では、北海道でのフットサルリーグは10部ぐらいまであって、チームも100チームぐらいあります。

だからこそできることなのかもしれませんが、日本のFリーグのなかで、強いては日本サッカー界のなかでも我々のような地元限定チームは珍しいと思います。もともとチーム創設時に、このようなチームカラーになるとは思っていなかったんです。それが今では「北海道出身の選手でチームを作っていこう」という方針が定着しています。それが、エスポラーダ北海道の考え方やアイデンティティーであり、魅力の一つでもあると思います。

- そんな北海道で生まれた「エスポラーダ北海道」の創設時はどのようなものでしたか。

Fリーグの初年度、忘れもしない2007年9月23日開幕戦のことです。北海道からチームを参入させようとしましたが叶えられなかった私は、残念ながらインターネットで試合の模様を観戦していました。その盛り上がりを見ていて「代々木体育館すごかったな… でも、いつか絶対ここに立ってみせる。」当時はそういう気持ちでした。簡単にいえば、Fリーグの開幕までにスポンサーを集められなかったのですが、それからも諦めずにスポンサーを募りました。

そして、僕の活動を聞きつけてくださった株式会社フィートエンタテインメントが運営会社となり、北海道サッカー協会、北海道フットサル連盟から承諾をもらって、2008年2月にセレクションを行いました。Fリーグの開幕戦での悔しい思いが、エスポラーダ北海道というチームに、会社になり、その思いを支えてくださる方々のお陰で、2009年よりFリーグに参入することができました。

- 2009年のFリーグ参入からこの10年間、SVOLMEはエスポラーダ北海道とともに歩んできました。

SVOLMEにサポートしていただいている当時から、ユニフォームを手にするたびに感動していました。2009年当時はSVOLMEが創業されてから4年目で、今のようにフットサルブランド自体が日本にそんなになかったですし、まだ北海道でSVOLMEが認知されていなかったんです。その翌年の2010年にSVOLMEの直営店が札幌で開店して、Fリーグのシーズン2年目の記者会見はそこで行いました。

お陰様で、今ではエスポラーダのユニフォームを着ている人を時より見かけます。北海道出身ということに選手がプライドを持ってやっていますし、多くのファンが試合に足を運んでくれることが嬉しいです。これからも、エスポラーダのユニフォームを着てくれる仲間が増えることを願って、スポンサーやサポーターに対して、きちんと結果で返していきたいと思っています。

- 今季第2節でFリーグ歴代2位の「5,343名」を動員した試合のエピソードをお聞かせください。

2018年2月にSVOLMEの渡邉社長とお会いした時に、エスポラーダのFリーグ参入10周年を記念して、来場者プレゼントとしてTシャツ配布をしよう、という話になりました。しかし、その数が4,000人分のTシャツということで、これはFリーグ初の試みです。最初は「正直大丈夫かな…」と思っていたんですが、2012年にキングカズ選手が参戦したときもそうですが、新しいこと楽しいことをどんどんしてきたい!という思いもありましたし、渡邉社長の「何としても実現させたい…!」という思いに共感し、熟考した末に準備を始めました。


  • (来場者に配布されたエスポラーダ北海道10周年記念Tシャツ)

結果的に5,343人の動員を記録して渡邉社長との約束を果たすことができました。そして、試合にも勝ってFリーグ参入10周年に弾みをつけることができました。SVOLMEとのこの企画は、純粋に試合での勝ち負けではなくて、やはり会場が水色に染まり、応援の熱気や興奮が選手に伝わり、何よりお客さんの笑顔を見ることができて、「やってよかったな…!」と思いました。北海道の地域のみんなでこれだけのことが達成できて、「スポーツっていいなぁ…」と感じました。テレビ中継も入っていたので、全道の皆さんにフットサルの魅力や盛り上がりをお見せできてホッとした、というのも正直なところでした。笑

(写真:エスポラーダ北海道 2018-19シーズンのホーム開幕戦でFリーグ歴代2位となる5,343人を動員)

より地域に根ざしたクラブへ。「デラ監督」や選手たちが行う地域活動

- エスポラーダ北海道はFリーグでこの4シーズン連続で観客動員数1位を記録しています。この秘訣はなんでしょうか。

北海道のプロスポーツとして、

① 北海道コンサドーレ札幌(Jリーグ)
② 日本ハムファイターズ(プロ野球)
③ レバンガ北海道(Bリーグ ※バスケットボール)
④ エスポラーダ北海道(Fリーグ)

の4球団があって、北海道は「スポーツを現場で見る文化」が根付いており、それは日本でもなかなかない地域です。試合での集客に対しては、エスポラーダの運営スタッフが集客に対して地道ですが責任を持って活動しています。観客動員数は成績に比例するものかもしれませんが、順位が奮わない時でもコンスタントに動員数を記録しているということは、エスポラーダがしっかりと地域に根を張って活動している証でもあります。だからこそ、勝利で恩返しをしなければいけないと強く感じますね。

- 北海道に根ざした地域活動で何かやっていることはありますか。

札幌市をはじめ、おもにホームゲームを開催する旭川、函館、釧路など全道各地で、教育委員会のご協力により、小学生を対象に体育の授業でフットサルをするために学校訪問を行っています。地域貢献やフットサルの普及も兼ねていますが、ボールをドリブルして、シュートしてもらう。そうやって、フットサルを通じてスポーツを好きになってもらう、ということを大切にしています。また、高学年には道徳の授業で「将来の夢」についてのお話をさせていただいています。

学校訪問で指導した児童たちも、たくさん試合会場に足を運んでくれて、「デラ先生!!デラ監督!!」と呼んでくれると一層パワーが出てきますし、選手の出身校を訪問することもあるので、自分たちの先輩がトップリーグで活躍している様子を見ることは、きっといいキッカケになると思っています。このようなフットサル教室は、例年、札幌だけでも20校以上は訪問しています。このように道産子限定チームの強みを活かすことによって、フットサルを通じて子供たちに夢を見せていくことが大切だと思っています。これからも継続していきたいですね。

- 今後、より地域に根付いたクラブになるために大切なことは何でしょうか。

「道産子限定チーム」このスタイルがブレないことが大切ですね。地元の選手だけでやるという自負です。そうは言っても、降格、昇格があるFリーグにおいてチーム力もつけていかないといけないのも現実です。

リーガ・エスパニョーラのアスレティック・ビルバオというサッカークラブは1912年以降、100年以上もバスク人しか選手としてチームに入れていないんです。そういうチームが世界にもあって、ビルバオはそれでいてレアル・マドリードやバルセロナと同様に、2部リーグに1回も降格していないチームなんです。(※ バスク人限定というクラブ方針は、近年規制が多少緩められ、直系の先祖にバスク出身者がいる選手はプレー可能となっている)

毎年優勝するわけではないけど、降格しない。つまり、「美学を追求しつつ、勝ち続けるチーム」そんなクラブ作りが理想ですね。