ーーはじめに、暁星国際学園という学校の特徴を教えて頂けますでしょうか。
内藤雅也監督(以下内藤さん) 暁星”国際”なので、ここの学校ができたそもそもの理由は「帰国子女を受け入れるため」で、元々は全寮制の男子校でした。そこがスタートで、今は共学になって、全寮制ではなくなりました。学校の特徴としては、小学校から英語のインターナショナルコースというのがあり、ほとんどの授業を英語で行います。小1から小6まで、そこにいる児童は英検1級を取ることもあるみたいです。小学校は木更津と流山に2つあって、中高は木更津にあります。そこでも英語教育には非常に力を入れています。中高も全く一緒で、インターナショナルコースがあって、レギュラーコースがあります。前者は中高でもほとんどの授業を英語でおこないます。高校からはアストラインターナショナルコースがあり、高校野球部と高校男子サッカー部と女子サッカー部で構成されています。このアストラインターナショナルコースの特徴は、週12時間英語の授業があること。毎日2時間、外国人の先生が1時間と日本人の先生による英語の授業が1時間あります。高3の時には最低でも英検準2級取得を目指しています。学校全体で英語教育に熱心に取り組み、世界のフィールドで活躍できる人材の育成を目指しています。またアストラインターナショナルコースでは水、木、金曜日は午後に総合学習として野球・サッカーの時間が設けられていて、13時半から練習をすることができます。
中高は留学生も積極的に受け入れています。中国人留学生は交換留学という形で入学したり、日本でサッカーをしたい外国人留学生が入学することもあります。基本的に留学してきても英語が喋れればある程度はやっていけるので。以前にもタイ人の生徒で、U-17タイ代表候補になっていた生徒が本校に高1から編入して来ましたが、その生徒は日本語がほとんど喋れないから、インターナショナルクラスに入って、英語をやりながら日本語も覚えてサッカーをやっていました。留学生が来てくれることによって、他国の文化や習慣を知るきっかけになりとても良い刺激になっていると思います。
寮生と通学生の割合で言うと、サッカー部は半々ぐらいです。本校は7時半から授業が始まるので、通える範囲が限られてきます。千葉県内の生徒も入寮している生徒が多いですね。寮生活を通して協調性や自律心が育まれるし、通学の移動時間が無いので学習・部活により集中できる環境だと思います。
本校としては英語をしっかりと習得して、国際人を育成することがコンセプトですね。
ーーサッカー部についてもお聞かせください。部の教育方針やプレーモデルは何かありますでしょうか。
内藤さん 大枠で言うと、主体性を持った生徒を高校3年間の中で育て、社会人になったときに通用できるようにすることが1つの目的だと思っています。あとは、生徒が主役。必ず中心には生徒がいるようにやっているので、僕ら指導者がやってあげられることは限られていて。
今年のチームのスローガンは、『邁進』というキャプテンが中心になって生徒全員で考えたスローガンで「失敗を恐れず自ら挑戦し昨日の自分より人としてPlayerとして成長する」を掲げています。
もう少し広げると暁星国際のサッカー部としては、沢山の人に応援されるようなチームを目指しています。
そのためには普段の生活とか、人との関わり方とか、そういうのを考えないと応援される組織にはならないよねって。
要はサッカーだけ出来てもダメなんだよと。気づいて、考えて、行動することを生徒にはよく言ってますね。
アストラインターナショナルコースが出来て間もない頃はトップダウンで指導者がチームのことを決めて生徒がやることが多かったです。
1期生が千葉県4部リーグからのスタートで、そこから3年生になるまでにトントン拍子で1部にあげてくれたんですよ。その時には既に県ベスト16ぐらいはコンスタントに入れるようになっていて。そこから先って考えたときに、選手自身が、本当にサッカーが好きだとか、もっと追求したいとか、上手くなりたい、とか。そういう意欲がないと無理だなっていう。指導者が全部決めてやっていると、言われたことだけやる、からある程度80点ぐらいは取ると思うんですよね、毎回の試合で。でも100点とか、それ以上取らないといけないときに、そこで超えていけない。自らサッカーがやりたくてここに来ていて、もっと強くなりたい、勝ちたい、そういう気持ちが自分たちから出てきて、お互いに腹を割って話し合ってみて。そういうのがないと難しいなと思ったのがきっかけで、生徒たちが考えて話し合い決めることを増やしていこうと思ったタイミングでしたね。
ーー今季のリーグは前半戦を終えて、首位と勝ち点3差の2位。かなり好調なシーズンなのではという印象を受けているのですが、その要因はどこにあると感じますか。
内藤さん やっぱり点数がしっかり獲れているところですね。去年からメンバーをガラッと変えて、11人ほとんどを入れ替えてのシーズンスタートだったので、立ち上げから試行錯誤して4-3-3やったりとか、3バックやったりとか、今は4-4-2に辿り着きました。結局はどうやって点数を獲るかだと思っていますね。その点数を獲るという部分で、うちの2トップは相当活躍してくれています。二人がバンバン点獲ってくれるので。あとは全員で全員で粘り強く守って。本当に泥臭く戦い続けられているなと。開幕戦で八千代(県立八千代高等学校)に3-0で勝ったんですよね、そういうのも大きかったと思います。去年1部で優勝しているチーム相手に無失点で勝ったので。春先の新人戦はコケちゃったりとか、2月3月は練習試合をやってもそんなに上手くいかなくて。でも開幕の試合で自信を得て、そこでハマった感がありました。
ーー得点力の向上の部分でいうと、具体的には2トップを使ってどんな形で崩せていることが多いですか。
内藤さん 暁星国際高校のサッカーは、毎年やるサッカーを変えているんですよ。ポゼッションでボールをずっと持ち続けるサッカー、というようなことは設定していなくて。その年によって選手の特徴・個性を見て、決めているんですよね。今年は2トップにゴールを決める選手とか、ボールを収められるタイプがいる。そこから逆算していって、どうアタッキングサードにボールを運んでいくのか。去年だと、CBからSBに入れて、アンカーに付けて、相手剥がして、前にゆっくり進んでいきゴールを奪うサッカーを目指していました。対して今は、DFラインの選手がボールを奪ったら、FWに刺せるんだったらすぐに刺そうっていうところからスタート。それもアバウトに蹴り込むっていうことじゃなくて、ちゃんと足元に転がして入れたりとか。スペースを取りに行って背後を奪いに行ったりとか。そういうプレーをしつつ、中盤が空いてきてちょっとでもスペースができたら中盤に付けるとか。僕らはアタッキングサードにどう入っていくか、を1つ目のトライとして考えていますね。何回侵入できているか、それが攻撃できているか否かの基準になる。そこは2トップが頑張ってくれて、ボールを引き出して、入れている試合が今季は多いかなという印象ですね。ゴール前のところは質。とにかく質を持っている選手。それぞれが持ち合わせている質をチーム内で互いに理解し合って、個性を活かし合って、ゴールを奪う。それが今年はしっかりと形にできています。
ーー高校のサッカー部には何人か中学から上がってくる選手がいると思いますが、中高6年体制で臨めるメリットはどんなことがありますか。
内藤さん 中学サッカー部は、各学年10人前後です。全部で30人前後。指導者は3人いるので、ここはかなり重点的に教えられます。授業が終わってすぐにグラウンドで出来て、18時には通学バスに乗ってすぐに帰れるっていうので、食事だとか、睡眠だとか、勉強する時間も確保でき生活リズムが非常に良いです。高校に上がったときのベースを作ることができる、そんな3年間だと思います。暁星国際中では、全く勝敗にこだわっていないって言ったらあれですけど、指導者の方はそこに重きを置いていなくて。中学3年間で生徒をいかに成長させ高校に上げていくかを考えた指導をしていると感じます。全中(全国中学校サッカー大会)関東大会のときに、レギュラーの子が寝坊したんですよ。そうしたら中学の小林監督はサブの選手を普通に出すんです。これ負けたら終わりっていう試合でも。そういうのって僕はとても大事だと思っていて。全国出場まであと少しっていうときの試合でも、2-0でリードしている状況で、ただまだ分からないって場面で、11人全員交代カードを切ったんですよ。僕も観に行っていて、さすがに早いんじゃないかって(笑)。でもそれができるのが暁星国際なのかなと、小林監督は常に先を見据えて中学生にたくさん経験させてくれているのかなと、こういうことを積み重ねていって、サッカー面や生活面でやって良いこと悪いこと、やるべきことやらないといけないこと、の理解が中学3年間で身に付いて。そこから高校に上がってくるので、僕からしたら本当にありがたいですよね。
ーーそんな選手たちを率いる中で大切にされていること、日々心掛けていることがあれば教えて下さい。
内藤さん 中学生、高校生は、伸びる要素が沢山あって。分からないこともかなり多いので。選手が悩みとか何かを聞きに来たら、ちゃんと答えられるぐらいのお互いの関係性で居たいなとは考えていますね。生徒と”対話”をすることを増やしたいと思っています。生徒は一人一人に個性があり、会話の中で気づかされることがたくさんあります。生徒一人一人の個性を大切に育てていきたいと思っています。
あとはサッカーだけでなく人として大きく太く逞しくなってほしいと常に思っています。嘘をついたりとか一生懸命やっている人をおちょくったりとか、そういう生徒に対しては厳しく言うこともあります。プレーに関しても自分に矢印が向かない選手も中にはいるじゃないですか。人のせいにしたりとか、そういうのは駄目ですよね。できなかったときにグッとこらえて、自分で何かできるところはなかったか、と考えるのが健全だから。
サッカーを通して彼らに出会ったことに感謝すると共に、高校3年間でたくさん成長してくれたらと想いが一番強いですね。
ーー残りのシーズン、リーグ後半戦、そして10月から選手権予選が始まります。改めて今季の目標、意気込みをお願いします。
内藤さん シーズン当初に選手たちが決めた目標は、総体&選手権の千葉県予選優勝。1部リーグは残留。今一年の半分が終わって、総体は2回戦でPKの末に負けてしまった。1部リーグは先ほども仰って頂いたように2位。これはたぶん残留っていうのは達成できると思います。後期のリーグ次第ではプリンスリーグ昇格も見えてくるかもしれませんね。簡単ではないですが。目の前の1戦に集中して一つ一つですね。
あとは、選手権。僕は優勝させてあげたいと思っていますよ。今年のチームは本当にキャプテン・3年生中心に一生懸命努力できる生徒が多いと思います。うまくいかなくても、諦めないで頑張れる。10月の選手権予選まで毎日を大切に切磋琢磨してほしいですね。
暁星国際高校サッカー部をたくさんの方々が応援やサポートをしてくれています。その思いを胸に選手権では全開で初優勝を目指して戦ってくれると思います。