横浜を本拠とし、神奈川・東京・千葉・埼玉・名古屋で主に幼稚園の施設でスクールを展開しているバディーサッカークラブ。総勢6,000名の選手たちが在籍している。その選抜チームは、全日本U-12サッカー選手権大会優勝やチビリンピック準優勝など、全国区で数々の輝かしい成績を残す神奈川の名門。1992年のチーム設立から30年という歴史がある中で、どのような軌跡を辿り今の形に至ったのか。今回はチームを代表して、選抜クラス統括の南雲さんにインタビューをさせていただき、日々の選手たちとの接し方や年末の全国大会に向けた意気込みを伺った。

神奈川県内チーム同士の切磋琢磨が生み出す強さ

ーーバディーSCは過去4回、全日本U-12サッカー選手権全国大会に出場されました。2010年に初出場・初優勝を飾るまで、全国レベルに引き上げられた要因はどんなところにあるのでしょうか。

南雲伸幸さん(以下南雲さん) 神奈川県というのはJクラブのジュニアが、横浜Fマリノス・川崎フロンターレとあります。県予選で優勝をするまでに、あと一勝すれば全国大会出場というのが4回はあって。一番全国に近付いたのが、2008年の第32回大会ですね。フロンターレを相手に延長までいって最後はPKで負けたのですが、本当にあと一歩のところがなかなか掴めずにいました。そういったJクラブの指導者とバチバチ試合はやってきたのですが、必ず試合が終わった後に声をかけてもらって。神奈川全体のサッカーが盛り上がり、レベルも上がったのかな、という印象です。神奈川にいるとなかなか全国へ届かないなと思いながらも、色々な経験をした中で、たくさんの指導者やスタッフとコミュニケーションを図り、学ぶこともすごく多くて。その結果が全国大会初出場・初優勝に繋がった要因じゃないかなと。神奈川にいるからこそ、チーム同士も仲は良いので、そういう環境もあるのかなと思っています。最近はよくサッカー界では県内のチームとはやらないとか、あると思いますが、昔は今のバディーフィールドのように自分たちのグラウンドがなかったので、マリノスに連絡を入れてうちとの練習、ゲームにしてもらうとか、していましたね。フロンターレも同様に、行ったりしていました。そういう風に神奈川県内のチーム同士で切磋琢磨したことが、うちが強くなった要因の1つかなと思います。

ーー実際に試合後に声をかけてもらう内容というのは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

南雲さん まだその頃は自分自身も若くて、周りはみんな先輩なので、僕のチームを向こうの監督さんが見て、率直にうちの選手に直接アドバイスをしてくれることもありましたし、「このチームを見る限り、やりたいことはこうだろう。」と話をされて、全て見透かされているような(笑)それぐらい素晴らしい指導者の方々がいて、今でもお付き合いさせていただいていますね。あともう1つあるのは、うちが幼児体育をしているということ。小さい頃から幼稚園に通って、体育指導を受けているので、最近でも特に言われるのが「バディーの子って、身体が動きますね。」と。それって小さい頃から体操をやっている、サッカーだけではなくて。うちは5種目やっているのですが、マット・跳び箱・なわとび・鉄棒・ボール。この5種目は幼稚園の体育の授業で教えているので、色々な種類の体操、サッカーだけではない色々な経験をした子どもたちがうちのチームに残って、6年生までやっていく。それは与えられた環境の中で自然と身に付いてくるものなので、よく外部のチームからも言われますね。

ーーそういう幼児体育の部分がバディーSCにとって対外的に魅力と感じられるポイントなのですね。

南雲さん そうですね。僕らは中にいる人間なので、実際にどう評価されているかは分からないですけど、僕たちはコーチではなくて、あくまで先生なので。子どもたちとの距離感もすごく近いと思いますし、”バディー”っていう名前どおり『仲間』。それはスタッフ同士もそうですし、選手とも仲間ということでやってきていますので、そういうところが良いと思ってもらえる部分なのかなとは思います。

バディーSCの巧さは、
約30分に及ぶ基礎練習が生み出す。

子どもたち一人一人に合わせたアプローチ

ーー幼児体育にも通ずるところかなと思うのですが、選手がピッチ内外で自ら考え、その時々に応じたより良い判断・行動ができるような指導をされる中で、南雲さんが日頃子どもたちと接するときに意識されていることは何かあるのでしょうか。

南雲さん 指導を25年ほどやっていますが、子どもって僕の中では変わっていないと思っていて。”今の子”とか”昔の子”っていう例えはよくありますが、まず一人一人をしっかりと見る。うちのチームは18~23人いるのですが、全体で話をする時間よりも一対一で話をする時間を多く取っていますね。例えば、ちょっとお尻を叩けば良くなる子もいれば、逆に下を向いてしまう子もいるので。目と目を合わせてしゃべるのが苦手な子もいますし。そのへんはいろんなやり方で、向き合っていますね。ただやっぱり、ちょっと僕らも歳を取って、普通に話しかけているけど、高圧的に感じ取る選手もいるので、そういうときは並んで話をしてみるとか、一人一人にどういうアプローチをしたら一番伝わるのか、を考えています。さっきのトレーニングでも同じ内容を説明しているのに、人によって受け取り方が違うとか。色々な感覚の子がいますが、昔なら”話聞いているのか”って一喝して終わっていたところを、歳とともに僕も伝え方を変えて、次はしっかりと聞かないと、という風に持って行くような。スタイルは僕自身ももちろん変わっていると思うのですが、ただその根本にあるのは、子どもたち一人一人に対しての伝え方とかアプローチは必ず変えながら、みんな同じではない、っていう意識で接していますね。

ーーそのような接し方がゆくゆくは“子どもたちの持つ潜在的な能力を最大限に引き出す”ということに繋がっていくのですね。

南雲さん そうですね。最近よく思うのは、自分の意見が言えなかったり、自己表現が出来ない子が少し多くなってきているかなと感じていて。失敗しないように、と。そういう形態をここ10年ぐらいは感じるので、きちんと自分の意見を伝える。でもこっちが怖い顔ばかりしていると伝えられずにその場の雰囲気に流されてしまう。ただそれもこっちがそうさせているのかもしれなくて、そこはもう素直に言える環境で、選手とは一緒にいたい、と特に最近は思いますね。やはり大人だとある程度答えが分かっちゃっているから、先回りするのではなく、広い目線で考えてあげる、というのは根本にありますね。そうすることで子どもたちも、持っている考えや発想力を最大限に活かしていけると思っています。

ーー確かに今日のトレーニング(選抜クラス6年生)を見ていても、改めて選手たちの素直さとON/OFFのメリハリには感心しました。最後に、年末の全日本に向けて意気込みをお聞かせいただけますか。

南雲さん ここ5~6年は年賀状でも平気でバディーの子って”全国優勝”っていう言葉を年賀状に書いてくるのですが、バディーに入った以上は全国大会『出場』と『優勝』という大きな目標を持ってきているので、そこに僕らスタッフが少しでもサポートできればいいと思っています。僕らが意気込むのではなく、選手がいきたいのであれば、僕らも協力して手を差し伸べて、一緒に全国大会にいきたいと思っています。今年の6年生であれば、非常に明るいし、監督もゆとりがあって。若いスタッフもいます。総合的に見ても良いチームだと思っているので、冬の全国大会に向けて日頃の練習も気を引き締めて、楽しくするところと集中して入り込むところと。メリハリがあるチームなので、ずっと緊張していてもダメだと思うし。”楽しく”がダラダラに繋がらないように。そういう部分はこっちも一歩引きながらサポートしながらやっていこうと思います。『全国大会優勝』、選手たちが目指したいというのであれば、ここに照準を絞って、しっかりとサポートしていきたいと思っています。

ーー全国の舞台で再び活躍するバディーSCの姿を楽しみにしています。応援しています!

Buddy SC 戦績_

◆神奈川県四大大会◆

全日本U-12選手権大会県予選(6年) ➡ 優勝 3回、準優勝 6回、
3位 4回

神奈川県チャンピオンシップ(6年) ➡ 優勝 6回、準優勝 1回

(4年) ➡ 優勝 3回、準優勝 3回

神奈川県少年サッカー選手権(6年) ➡ 優勝 5回、準優勝 2回

(4年) ➡ 優勝 8回、準優勝 3回

チビリン神奈川県8人制大会(6年) ➡ 優勝 6回、準優勝 1回

◆関東・全国大会◆

全日本U-12サッカー
選手権大会(6年)
優勝 2回、3位 1回、ベスト8 1回

関東大会(6年)優勝 1回、準優勝 2回、3位 3回、
5位 2回

チビリンピック
関東大会(5年)
3位 2回、5位 2回

チビリンピック
全国大会(5年)
準優勝 1回

全国少年少女
草サッカー大会(6年)
優勝 1回、準優勝 2回、3位 2回

スポーツオーソリティ
カップ全国大会(6年)
優勝 1回

Profile_

南雲伸幸●なぐも・のぶゆき

1973年、福井県出身。バディーサッカークラブ統括。2010年の全日本U-12サッカー選手権全国大会の初出場・初優勝をはじめ、数々の大会でチームを優勝に導く。2019年には同大会で2度目の全国制覇を成し遂げた。優れた状況判断と積極的に奪いに行く連動した守備を武器とするチームで、第46回大会の全国出場と優勝を目指す。