2018年のサッカーJ2リーグを4位で終え、大健闘を果たしたFC町田ゼルビア。これまでに東京都リーグ、関東リーグ、JFL、J3、J2と昇格してきたFC町田ゼルビアは、名だたるJ1経験クラブを相手に堂々の戦いぶりを見せました。しかし、チームは「J1クラブライセンス」を取得しておらず、シーズン4位という好成績を納めたものの、J1昇格プレーオフに進出することはできませんでした。

現在、FC町田ゼルビアはスタジアムの入場可能人員が15,000人を満たしておらず、練習場は天然芝ではなく、隣接するクラブハウスも持っていません。これら全てをクリアしなければJ1クラブライセンスを取得できません。しかし、2018年10月16日に株式会社サイバーエージェントが株式会社ゼルビアの経営権を取得。チームは改革に乗り出しました。2018シーズンの振り返りとともに、2020年のJ1昇格を目指すチームについて、株式会社ゼルビア代表取締役社長の大友健寿さんにお話を伺いました。

2019.01.11

2020年のJ1昇格へ向けて動き出したFC町田ゼルビアの未来

大友健寿さん(株式会社ゼルビア 代表取締役社長)

チームの成績は素晴らしかったものの、課題はそれ以外のところに

- 2018シーズンはJ2でチーム過去最高順位の4位でした。今季を振り返ってどうですか。

2018年4月に私が社長となり立場が変わってチームの見方も変わりました。チームの財務状況からすると、いつJ3に落ちても仕方がない状況でした。2016年はJ2残留、2017年はJ2定着、2018年はJ1にチャレンジできる体制を築く、というステップでやってきましたが、今季の初めに会長(下川浩之氏)が「6位以内を狙います!」と発言した時には「覚悟を決めたな」と思いました。2018シーズンのホーム開幕戦は、我々とはクラブ規模が5倍ほど違う大宮アルディージャでしたが、格上のクラブに対して3-2で勝つことができました。

今季は格上のクラブを相手に勝ち点を積み上げていったのですが、最終節まで優勝争いをするとは思っていませんでした。チームの成績は素晴らしいもので、監督や選手には感謝しかありません。J1ライセンスを持っていない事を選手も監督もわかっていながらも、J2で6位以内を目指しました。そんな中でモチベーションを維持できたのは、相馬直樹監督の指導の賜物で、「1戦1戦が大事」ということを選手がわかっていました。しかし、今季は観客動員数が1試合平均4915人。J2で7位だった2016年は1試合平均5123人でしたので、チームの成績を考えるともっと集客しなければならなかった…と、我々は責任を感じています。

- 現在は「ゼルビアの社長」の大友さんですが、町田市出身なのですね。

はい、子供の時は町田でサッカーをしていました。中学の時に奄美大島に引越し、サッカー部が無かったためバレーボールをやっていたのですが、その頃FC町田の同級生が全国3位になったのがきっかけで、やはり自分もまたサッカーがしたいと思い、高校でサッカーを再開しました。その後、関東の大学に進学して関東で就職しました。その時に「ゼルビア」というチームの存在を知りました。子供の頃はFC町田でサッカーをしていたのですが、トップチームの存在を知らなかったのです。そして、サラリーマンとして働きつつ2000〜2006年にFC町田ゼルビアの選手として、東京都1部と関東2部リーグでプレーして、2006年からはサラリーマンを辞め、ゼルビアに就職し、チームのバックアップに努めました。

- チームがJFLに昇格した2009年から10年間、SVOLMEがサプライヤーになりました。SVOLMEに代わったキッカケは?

2006年ぐらいですね、SVOLMEの立ち上げの当時に、SVOLMEの渡邉社長と飲みにいったことが始まりです。それから、チームが関東2部リーグからJFLに昇格した時に、ユニフォームのサプライヤーのコンペをして、渡邉社長に声をかけたのです。当時、大手スポーツメーカーなど6, 7社は来ていたと思いますが、SVOLMEは渡邉社長のプレゼン力でゼルビアとのサプライヤー契約を勝ち取りました。渡邉社長は当時、自らの夢を語っていて「我々と共に歩んで成長していきましょう」というスタンスでした。当時、ゼルビアも“これから大きくなっていこう”というクラブだったのでその言葉が響いたのだと記憶しています。

新たなスポンサーを迎えて本格的にJ1ライセンス取得に向けて動き出したゼルビア

- 10月1日にサイバーエージェントがゼルビアの経営権を取得したことがニュースになりましたね。

我々のクラブでは数年前から「今後J1、世界を目指していくなら“大きな資本”を入れていく必要があるのではないか」という議論がありました。我々が抱えているJ1ライセンスへのハードルとは、練習場やクラブハウス、スタジアム規模などハード部分の問題です。町田市の財政規模からみて、スタジアム増席だけでも相当な理解が必要で、練習場の建設までは厳しいのです。そうはいっても人工芝で練習しているのは恐らくゼルビアだけ。そういう状況を変えていかないと…というタイミングで、今回の一件がありました。これでやっと天然芝の練習場の建設に向けて希望が見えてきました。

- チームはこれからどう変わっていくのでしょうか。

近隣に東京や川崎など大きな都市がありますが、都心部は多くの情報が溢れ、Jリーグ自体が話題となりにくいと感じています。コンテンツ開発はJリーグの全チームが工夫しないといけない部分だとも思います。ゼルビアはJ2ですが、今後コンテンツとして良く考え工夫することで売り出していけば、※1)首都圏で人はいるから集客できるポテンシャルはあります。スタジアム以外での盛り上げや、交通アクセスなどまだまだ課題があって、それらを1つ1つ改善することが集客に繋がります。こればかりは地道にコツコツやってくしかないです。今年はチームは4位でしたが、※2)集客は19位でした。まだまだクラブの努力が足りないのです。どうやって人を集めるか、もっともっと課題と向き合ってそれらを改善していきたいと思っています。

※1)町田市の推計人口:433,938人(2018年10月1日)
※2)2018年J2観客動員数:FC町田ゼルビア103,215人=19位(22チーム中)最高10,013人、最低2,414人、平均4,915人、前年比+21.1%

- 資本が増すと、今後ビッグネームの選手をチームに呼べるのではないですか?

いずれクラブハウスができてグラウンドが2面ぐらいあって、そのような環境を整備するところまでいけば、そういう動きがあってもいいのかなと思いますが、今後も地元に根ざすクラブということは変わりません。いきなり資本が増したといっても、今までに積み上げてきたものをいきなり壊すことはできませんし、それをやってしまったらバランスが崩れてチームが勝てなくなります。今まで積み上げてきたものにプラスアルファしてレベルを上げて、勝てるチームを継続していく。クラブの成長のスピードはこれまでよりも確実に上がっています。

- 今年はトップチーム創設30周年の節目の年ですね。

町田市民の9割以上はFC町田ゼルビアのことを知っているのですが、スタジアムにはその2割足らずの人しかこれまでに足を運んでもらっていません。もっと多くの人にスタジアムに足を運んでもらい、もっと町田市全体でゼルビアを応援していかなければなりません。2020年のJ1昇格へ向けて、来季のJ2もビッククラブ相手にハードな戦いが続くでしょうが、現場の選手はしっかりとやってくれると思います。あとは我々フロント陣が、これからどう変わっていけるかが重要だと思っています。

■FC町田ゼルビア オフィシャルサイト
http://www.zelvia.co.jp/