学生陸上界では言わずと知れた福岡・大牟田高校駅伝部。
厳しい練習と生活習慣の徹底で選手能力を磨き上げる、
創部から60年以上もの歴史を誇る伝統校。
2020年の全国高校駅伝では7年振りの8位入賞を果たす。
指揮を執り16年、全国へと襷を繋ぎ続ける
数多のプレッシャーのなかで
赤池健監督はどのように日々生徒たちと向き合っているのだろうか。
赤池監督と、妻であり同校の寮母であるもやいさん2人の言葉から
大牟田の強さの由縁と今後の展望を伺う。

ーー始めに、大牟田高校駅伝部とはどういったチームなのか、簡単に教えて頂けますでしょうか。

赤池健監督(以下赤池監督) 大牟田高校駅伝部は、今年で創立64年が経ちます。今まで私の恩師である大見先生(1972~2006年まで長きに渡り大牟田を率いた名伯楽)の時に初めて全国優勝をして、それから連覇を含めて5回の優勝、9回の準優勝、3位が2回と高校駅伝優勝の常連チームです。しかし2000年から優勝に遠ざかっていることもあり、私が監督になった2006年からも久しく入賞がありませんでした。その中で2020年は8位入賞することができましたがやはりもう一度全国優勝したいと捲土重来を期して、頑張っているところです。昔の先輩たちに負けないように、時代の変化で難しい部分も多々ありますが、そういうのを言い訳にせず、子どもたちと一緒に、毎日切磋琢磨して努力をするという風なチームだと思っています。

ーー赤池監督が日々の指導の中で意識されていることは何でしょうか。また、周りからのプレッシャーがたくさんある中で、結果を出し続けることの難しさを乗り越えるためのコツなどがあればお聞きしたいです。

赤池監督 僕自身、現役時代にインターハイには出場したのですが、全国高校駅伝もその予選も、大学進学後の箱根駅伝も、一度も本選を走ったことがありません。選手・補欠には入っていましたが、実際に出場できていなくて。そういう経験があるので、出場する選手の気持ちも補欠以下の選手の気持ちも両方の立場を理解してあげられると思っています。だからこそ子どもたちに対しても全国高校駅伝に出場した時に、こんなにきつかった、苦しかったというところが本当に報われることを、綺麗事ではなく感じて欲しい。特に長距離走は年に数日しか楽しいとか嬉しいことがないと思いますが、目標に向かって強くなりたいと思って毎日毎日一生懸命に努力して、何かを犠牲にしてやり切ることで勝つ喜びを感じられる、そういう気持ちを味わってもらいたいということは常に思っていることですね。あとは、高校だけで燃え尽きてはだめだという気持ちも僕は強くあったので、高校で擦り切れるのではなくて大学や実業団に行っても更に伸びるような、そういう子たちを育てたい、という想いもあります。今は、勝利至上主義は駄目だとかよく言われていますが、競技をやっている人にとってそれは綺麗事で、やっぱり評価してくれるのは何なのかといったらこれだけ頑張りましたという結果だと僕は思っています。頂点を目標にやっていて、勝利を目指して頑張らないと評価はしてもらえない、こういう厳しさは絶対にあります。だからこの厳しさに打ち勝つには、我慢する力が必要になってきます。我慢するっていうのはただ競技で我慢するというだけではなく、精神力は日頃の生活からしか付かないと思います。規則正しい生活から挨拶などの決まり事をきちんとしていることで、競技でもきちんと記録を出すことや結果を残すことに繋がります。ましてこの駅伝競技・陸上競技の長距離っていうのは、それがイコールになるところが非常に大きいですね。だからこそ規則正しい生活をしなさいということは力強く言っています。謙虚さ・素直さ・感謝の気持ち・仲間意識・思いやり・そして向上心、大牟田高校駅伝部は昔からですが、これらは当たり前のこととして意識してやっていますね。

ーー今現在3学年で30人近く、1年生だけで半数以上が在籍されています。部員たちの出身地を見ると福岡県内を中心に九州他県、中国・近畿地方から来ています。スカウティングにおいて重要視しているポイントはどんなところにあるのでしょうか。

赤池監督 本当に今年は異常です、16人も新入生が決まったというのは。大体1学年10人っていうのがうちの学校で。スカウトをやるようになってからだいぶ経ちますが、結局はその中学校の先生との関わりやそこからの繋がりっていうのが大きいなとは思いますね。もちろん全国で何番だとか、速い子に来て欲しいという気持ちはありますが、最近になって思うのは、縁だなと。育てるというよりも来てくれた子を一人前にしてあげる、というような想いでやっているので。どこを見ているかという部分で言うと、僕が一番大事にしているのは人間性が伸びるかどうか。先ほどもお話ししたようにこの人間性が伸びないと競技力が伸びてこないというところがあると思っています。人間的に高校生らしい、どこに行っても恥ずかしくない、そういう子を最終的には作ってあげたいと思いますね。

ーーSVOLMEとの出会いを教えて頂けますか。

赤池監督 以前に使っていたメーカーとの契約が終了して、どこのメーカーにしようかと悩んでいた時に、妻と”最初に声をかけてくれたところにしない?”という話をしていて。それがSVOLMEさんでした。当時SVOLMEさんは陸上を始めたばかりで、変えるならどこも着ていないところが良いなというのもあって。あとは何よりデザインが良い、チームと一緒に戦っているっていうのを強く感じました。お互いがウィンウィンの関係にというところで、僕たちはそのユニフォームを着て活躍したい、どこも着ていないような奇抜なデザインで目立ってやろう、と。一方で伝統は重んじるという部分もしっかりと対応してくれる、そういうところでSVOLMEさんに決めました。

ーー最後に、おととし全国で7年ぶりに入賞を果たされました。今年のチームの目標をお聞かせください。

赤池監督 何の縁か、SVOLMEさんに変えた年が8位という久し振りの入賞でした。この勢いを続けていきたいという中で去年ああいったアクシデントがあり…(2021年10月31日, 福岡県予選の最終7区でアンカーが脱水症状で失速し逆転負けを喫し全国出場を逃した)。2年目にして躓いてしまってという気持ちもありましたが、今年はこの経験を活かして益々強いチームにという形でスタートして頑張ってきているので、まずは全国高校駅伝にきちんと出場を果たして、なおかつ出場するからには、子どもたちが掲げている『どん底から頂点へ』というその頂点を目指して、やらなくてはいけないと思っています。1つ1つを見直しながら確実に、“きちんと”のレベルを上げて、全国級に持って行けるように、速いチームではなく強いチームを作るという気持ちで子どもたちも僕もやっています。そういう意味ではここぞというところで勝てるチームになるべく、毎日を過ごしているので、本当にやるからには全国高校駅伝でSVOLMEさんと共に優勝したい、というのが大きな目標です。そして、子どもたちだけではなくて、僕もコーチも妻も、子どもたちを贈ってくれたお父さんお母さんも、中学高校の先生たちも、色々な方々と最後の最後は笑って終わりたい、みんなで笑って終わりたい、という想いがあります。子どもたちには“泣くのは勝った時だけ”といつも言っているので、思いっきり泣きたいですよね。頂点を目指して、頑張りたいと思います。

ーーご夫婦で大牟田高校駅伝部を支えられて20年近くになるかと思いますが、奥さんが選手たちと接する時に大事にされていることは何でしょうか。

赤池もやいさん(以下もやいさん) 私自身もスポーツでずっと大学まで行ったので、子どもたちの気持ちも分かります。ダメな時、良い時の気持ちとかいうのもある程度は理解しているので、その部分を配慮しながら接しています。ご飯も朝と夜は必ず一緒に食べるので、そのときに1人1人の顔を見る。一番気を付けているのは、やっぱり本気でぶつかるというところですね。私たちのことも子どもたちはよく見ているので。だからこの人たち適当に言っているなとか、適当にやっているなというのは恐らく見透かされる。主人と子どもたちの意見がぶつかったときは、私は一緒にすぐ話をして、じゃあこうしようという感じで。常に本気で向き合うこと、これが私のスタイルです。

ーー今年の選手たちに期待することをお聞かせいただけますか。

もやいさん 今年の3年生っていうのが、まあ真面目。中学時代のエリートも多いです。全国中学で何番に入ったとかいう子も多くて。その分、凝り固まっているところも多かったですね。自分の考えがきちっと固まっている子が多いから、そこを”そうじゃない”とやりながら、やっていくのが結構大変でした。その中で子どもたちが立てた目標というのが『どん底から頂点へ』。去年うちは県大会で負けているので、こういう目標を立ててきました。その目標とは他に、サブ目標として「赤池監督を日本一へ」と書いてくれていました。それでやっぱりこれはいよいよちょっと頑張ろうという感じに私たちもなって。私たちも何としても勝とうという感じでやり始めてチームを作ってきている状況ですね。主人にとっては監督冥利に尽きるというか。そんな中で、私と子どもたちで交換日記をすることになりました。”交換日記をしませんか”みたいな感じで子どもたちが言ってきて。内容的にも自分の思いの丈の悩みをぶちまけるっていう感じですね。まあそれで子どもたちの考えもよく分かるし、そんなことを思いながらやっているのかと気付かされることもあるし…。私も厳しいことを書くし。なかなか1人1人とじっくり話すことが時間的にも厳しかったりするので、こういうのを書いてきて、”赤池先生は何をどう思っているのでしょうか”みたいな質問も多いから、こういう考えだよっていうことを私の方から伝えてあげるとか。これが今年からやり始めた試みの一つです。きちんと続けてやってきているので、勝たせてあげたい、というのが私たちの素直な気持ちです。何としても勝たせてあげたい。

ーー最後に、今の子どもたちが将来的にこんな大人に育って欲しいという思いなどはありますでしょうか。。

もやいさん うち、OBはよく帰ってきます、メンタルやられて(笑)単純に言えば、元気に頑張ってくれたらっていうそこだけですね。大体の卒業生は、大牟田で我慢できたから大学に行ってもすごく楽だったし、仕事をしてもまあ重宝がられるって言いますね。今の子どもたちにも言っていますが、気を利かせて、やるっていう。誰かが荷物を持っていたらさっと手伝いに行きなさいとか、そういうところは細かく。やっぱり先輩の姿を見てやってきているので、社会人になっても苦労せずにやれていますっていう子も多くて。何でもやり切るということが大事ですね。ここ大牟田は、いつでも帰って来られる場所、いわば家みたいなところかなと思っています。今の子どもたちにも、卒業後は元気な姿で、顔を出しに帰って来てもらいたいですね。

プロフィール

[赤池 健●あかいけ・けん] 大牟田高校駅伝部OB。1995年に日本体育大学を卒業後、母校大牟田高校の指導に携わる。2006年2月に同校監督に就任。2013年に全国高校駅伝で同校史上9度目の準優勝を経験。そこからは入賞が遠ざかるが、2020年の全国高校駅伝では8位入賞に導く。

[赤池 もやい●あかいけ・もやい] 大牟田高校駅伝部の寮母さん。監督と同じく日本体育大学卒業。夫婦二人三脚で強い大牟田を取り戻すべく日々子どもたちと向き合う。『どん底から頂点へ』という子どもたちが掲げた目標を軸に、2022年都大路出場、全国優勝を全力でサポートする。